月性年譜

1817(文化14)0歳周防国大島郡遠崎村妙円寺にて誕生
1829(文政12)13歳西本願寺で得度する(出家して僧になる)
1831(天保2)15歳九州豊前市の恒遠醒窓の漢学塾「蔵春園」の梨花寮に入る
1836(天保7)20歳広島の坂井虎山の百千堂に入塾。佐賀善定寺の不及の精居寮に入る
1838(天保8)22歳長崎の鬼界島(硫黄島)でオランダ船を見る
1842(天保13)26歳蔵春園で恒遠醒窓の代講をする
1843(天保14)27歳『将東遊題壁』(男児立志)の作詩。篠崎小竹の梅花塾に入門し、塾頭になる
1844(弘化元)28歳叔父龍護と上京し、本願寺派の勤王僧超然と出会う
1848(嘉永元)32歳清狂草堂(時習館)開塾
1849(嘉永2)33歳坂井虎山、篠崎小竹、斉藤拙堂、野田笛浦らの詩文をまとめて『今世名家文鈔』八巻を編纂
1852(嘉永5)36歳妙円寺の住職となり、梅野と結婚。秋良敦之助に伴われ村田清風の別邸を訪ねる
1853(嘉永6)37歳年末から春にかけ、最初の建白で海防論を述べた『内海杞憂』を執筆
1854(嘉永7
・安政元)
38歳藩政に対する改革意見を述べた『封事草稿』(『藩政改革意見封事』)を起稿し、翌年初め、秋良敦之助の添削を経て上疏する
1855(安政2)39歳この頃より吉田松陰と書を交わすようになる
1856(安政3)40歳長女簾子誕生。京都本願寺の広如法主に招かれ、翠紅館で『護法意見封事』(のちに『護国論』『仏法護国論』)執筆し、10月に呈する
1857(安政4)41歳母尾上が死去
1858(安政5)42歳松陰、月性の講演に塾生を拝聴させる。萩に行く途中、発病し遠崎に戻り、5月10日没する。(安政の大獄が起きる4か月前)

月性の業績

 嘉永2年夏、「今世名家文鈔」八巻を編纂し出版した。これは篠崎小竹、斎藤拙堂、坂井虎山、野田笛浦の文集で関西におけるもっとも優れた儒者四人を選んだもので、当時の文人知名士の間に非常に歓迎されベストセラーとなった。
 藩政改革意見書とも言われ、内外多難の時局に処する藩侯への献策を述べた安政元年12月「意見封事」では、藩侯の反省を促すため、激越な語句をもって、その公私生活を論難し、長州藩こそ率先して討幕の主唱者たれと建言している。
 「内海妃憂」は、海防の要いよいよ急となったとき、その具体的対応策を諭したもので、のちに本願寺から全国末寺に配布された「護国論」の実践綱領とも言うべきものである。海防五策をたてて外夷に備うべきを説き、特に士農工商を問わず志のある者を以て、新しい兵制を確立すべきを唱えた。これがやがて、安政五年に高杉晋作が書いた「強兵の本」や、文久三年幕長戦に編成した奇兵隊の基となった。
 月性は、優れた詩人として、多くの傑作を遺し、その作詩は千篇を越すと言われる。その著「清狂吟稿」は、今萩の松陰神社に所蔵、三巻二冊より成り第一巻は月性の自筆、男児立志の詩はこの第一巻中にある。この吟稿は安政2年正月、吉田松陰の兄、梅太郎を通して月性が松陰におくったもので、松陰は月性の護国論と吟稿は松下村塾において、これを出版して天下の同士に寄示するよう「留魂録」に書き遺したが果たされなかった。明治2年に村塾で松陰評の三十首を載せた「清狂詩秒」という小冊子が出たに過ぎなかった。明治25年1月、門下の大洲鉄然・天地哲雄が共編で「清狂遺稿」を梓行している。
 このように文に詩に多くの業績を遺したが、月性の真面目は、尊皇攘夷の徹底した持論を、特異の弁舌を以って大衆に向かって宣揚したその実践活動にある。当時の封建社会において、これができるのは独り僧侶のみであった。僧侶は仏の道を説く者として、殆んど権力の外におかれた。勿論安心立命の道も説いたであろうが、それ以上に時局を論じ特に海防の急を説いた。当時長州藩の重臣村田清風、藩老の益田弾正、福原越後、浦靭負などは月性の海防護国の主張に共鳴して、しばしば自分の領内に講説せしめた。後には藩命により防長二州の全域にわたった。萩清光寺の講演の折には松陰は村塾の授業を休んで塾生を聴講させている。その論旨は時には幕政の非議に及び、しばしば幕吏に狙われた事もあった。このことは、安政3年6月、松陰の月性宛書簡中に「上人虎口を免れたりとて世上大評判なり云々」とあるによってもわかる。また婦女子に対しては服装の華美を戒め、外夷を一歩も神州の地に近づけないため武芸をたしなむことを諭した。後に四国連合艦隊が馬関に来襲したとき、萩の婦人が女台場を築いて長州婦人の意気を示したことも決して偶然ではなかった。月性の講演の反響としての逸話は各地に伝え遺されている。要するに我が国社会組織の中に厳として打破ることの出来ない士農工商と言う階級意識を対外危機感をかためることによって、大きく変えてゆく契機を造ったことは、やがて四境の戦から戊辰の役まで藩をあげて一丸となって進んだ長州藩の原動力としての役割を果たしたものと言えよう。

説明資料

 月性とはpdf PDF 1120KB@kawa
「吉田松陰と月性」の関わりpdf PDF 266KB@kawa
「久坂玄機と月性」の関わりpdf PDF 171KB@kawa
「久坂玄瑞と月性」の関わりpdf PDF 243KB@kawa

 「将東遊壁題」訳文pdf PDF 154KB
 展示館パンフレットpdf PDF 1,440KB
 境内「顕彰碑」説明文pdf PDF 2,488KB
 展示館「月性画像」「絹本釈月性画像」説明文pdf PDF 1,933KB
 展示館「網代笠」説明文pdf PDF 3,183KB
 「月性と月照」pdf PDF 3,281KB
 「清狂会月性上人活動写真撮影趣意書」pdf PDF 779KB

関連書籍ギャラリー

講演会の記録

開催日行事名 演題 講演者 敬称略
H13.6.19 第1回追慕記念行事講演 若き月性と清狂草堂 当顕彰会理事 沖原宗雄
H14.6.22 第2回追慕記念行事講演 月性歴史説明 当顕彰会理事 沖原宗雄
H15.10.25第3回追慕記念行事講演 月性歴史説明 当顕彰会理事 沖原宗雄
H16.6.27 第4回追慕記念行事講演 月性歴史説明 当顕彰会理事 沖原宗雄
H17.7.24 第5回追慕記念行事講演 明治維新と月性上人 当顕彰会理事元龍谷大学教授 児玉識
H18.6.18 第6回追慕記念行事講演 月性門下と幕末長州藩 大島商船高等専門学校講師 田口由香
H19.6.17 僧月性150回忌追悼講演 月性上人の思想と行動 元龍谷大学(円通寺住職)教授 児玉識
H19.6.24 第7回追慕記念行事講演 詩と月性~文芸的公共圏の広がり~県史編さん室明治維新部会専門委員 上田純子
H20.6.22 第8回追慕記念行事講演 月性と出版~文人から勤王僧へ~ 広島学院中・高等学校教諭 蔵本朋依
H20.8.30 「世良修蔵展」記念講演世良修蔵~清狂草堂志士とその時代~大島商船高等専門学校講師 田口由香
H21.6.21 第9回追慕記念行事講演 月性の交遊とその人物 県史編さん室民俗部会専門研究委員 石永雅
H21.10.25「史劇海防僧妙円寺月性上人」映画上映会蘇った大正時代制作の映画海防僧妙円寺月性上人について 元龍谷大学(円通寺住職)教授 児玉識 
H22.6.20 第10回追慕記念行事講演月性と本願寺教団 龍谷大学非常勤講師 岩田真美
H22.12.12柳井市文化連盟文化講演会僧月性の歩いた道 京都大学名誉教授 海原徹
H23.6.19 第11回追慕記念行事講演月性と日田咸宜園 大分県立先哲史料館主任研究員 大野雅之
H24.2.19 柳井市文化連盟文化講演会維新の海防僧 月性 読売新聞社社友 秋田博
H24.6.24 第12回追慕記念行事講演僧月性の志をうけつぐ~長州四傑僧の足跡をたどる旅~山口県立大学国際文化学部地域学研究室教授 安渓遊地
H25.6.16 第13回追慕記念行事講演小瀬川口の戦いについて 岩国徴古館学芸員 松岡智訓
H26.6.15 第14回追慕記念行事講演月性~文化的・政治的ネットワークの結節点として~県史編さん室明治維新部会専門委員 上田純子
H27.6.14 第15回追慕記念行事講演月性・松陰・玄瑞・あれこれ萩博物館特別学芸員 一坂太郎
H27.10.24時習館講座第1回 月性漢詩入門 京都女子大学中国文学教授 愛甲弘志
H28.6.19 第16回追慕記念行事講演四鏡の役150周年幕末長州藩と大島口の戦い大島商船高等専門学校准教授県史編さん室明治維新部会専門委員 田口由香
H28.10.23時習館講座第2回 月性さんの頃の遠崎村、阿月村、大島郡『防長風土注進案』の記述を中心に 山口県文書館副館長 金谷匡人
H29.3.26 時習館講座第3回 江戸幕府輸出海産物と遠崎山口大医学名誉教授 小川國治
H29.4.23 生誕200年記念講演会(1)幕末維新のここが面白い 跡見学園女子大学教授 三谷博
H29.5.27 生誕200年記念講演会(2)積極開国論か攘夷論か 立命館大学助教 奈良勝司
H29.6.18 生誕200年記念講演会(3)攘夷とは何か 仏教大学教授 青山忠正
H29.7.23 生誕200年記念講演会(4)洋上はるか彼方のニッポンへ京都橘大学文学部歴史学科准教授 後藤敦史
H29.8.27 生誕200年記念講演会(5)尊王とは何か 愛知教育大学教授 前田勉
H29.10.14生誕200年記念講演会(6)漢詩のなかの月性 京都女子大学 愛甲弘志
H29.11.5 生誕200年記念講演会(7)僧月性の交友と交際 県史編さん専門委員(明治維新部会) 上田純子
H30.1.28 やまぐちの歴史講座 時習館から始まる維新への道大島商船高等専門学校准教授 田口由香
H30.10.20時習館講座第4回 幕末維新の旧蹟を訪ねて、見たこと、感じたこと、考えたこと中国新聞特別編集委員 山城滋
R1.6.7 第19回追慕記念行事講演月性と萩藩士との交友 山口県地方史学会名誉会長 小山良昌

関連外部リンク

山口県立山口図書館・山口県文書館/WEB版明治維新資料室山口県立山口図書館・山口県文書館/WEB版明治維新資料室
 平成30年に県立図書館と文書館共同で構築された明治維新資料データベース。
京都大学附属図書館維新資料画像データベース京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
 維新資料の京都尊攘堂資料データペースに月性から杉梅太郎宛書状などの書状あり。
松陰神社松陰神社
 宝物殿至誠館には関係資料、吉田松陰歴史館には蝋人形の月性さんが出没。
萩博物館萩博物館
 お殿様のお膝元。自転車でブラブラ散策が似合うまちです。
元気になるメールマガジン山口きらめーる元気になるメールマガジン山口きらめーる
 才女あみちゃんが執筆の紹介文。キラメールはキラリンクに変わりました。
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柳井市役所柳井市役所
 山口県柳井市役所 「やない」と読みます。